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過敏性腸症候群(IBS)

お腹の痛みや
下痢・便秘を繰り返すのに、
検査では大きな異常が
見つからない方へ

お腹の痛み(腹痛)や下痢、便秘を繰り返すと、日常生活や仕事・学業に大きな支障をきたします。過敏性腸症候群(IBS)は腸の働きや感じ方の不調が中心となる「機能性腸疾患」の一つです。つらい症状を「体質だから」とあきらめず、適切な診断と生活・薬物療法で改善が期待できます。


過敏性腸症候群とは

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)は、腹痛や腹部不快感が排便に関連して起こり、下痢・便秘・混合型などの便通異常が慢性的に続くにもかかわらず、腸に明らかな器質的異常がない病態です。
病態には、「腸脳相関」と呼ばれる、ストレスや自律神経と腸の働きが相互に影響し合う仕組みの乱れが深く関与しています。若年〜中年で発症しやすく、波のある経過をたどりますが、治療やセルフケアでコントロールできることが多い疾患です。
近年、炎症や免疫異常の関与も指摘されています。


過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群(IBS)は、一つの原因だけで起こるわけではありません。いくつかの要因が重なって症状が出やすくなります。

腸脳相関の乱れ・自律神経の不調

ストレスや睡眠不足、緊張などで自律神経のバランスが崩れると、腸の運動や機能が過剰になったり、逆に低下したりします。内臓知覚過敏といって、脳が知覚を過敏に感じとるようになることで、軽い腸の動きでも腹痛や張りを強く自覚してしまいます。

腸の知覚過敏・運動異常

腸の壁が刺激に敏感になり(知覚過敏)、ガスや便が少量でも強い不快感や痛みにつながります。蠕動運動が速すぎると下痢、遅すぎると便秘が続き、腹痛を伴いやすくなります。

腸内環境(腸内細菌叢)の乱れ

食生活の乱れや抗菌薬の使用、ストレスなどで腸内細菌のバランスが崩れると、ガス産生や腸の炎症性シグナルが変化し、腹部膨満感や便通異常が出やすくなります。

感染後過敏性腸症候群
(PI-IBS)

急性胃腸炎の後、腸の粘膜や免疫の反応性が変化して、下痢や腹痛が慢性的に続くタイプです。発症のきっかけがはっきりしているため、生活・薬物療法を組み合わせて経過をみます。
発症のリスク因子は若年、女性、胃腸炎が重症で罹患期間が長い、不安や抗うつ傾向などがいわれています。

食事(FODMAP・刺激物)

小腸で吸収されにくい発酵性糖質(FODMAP)や脂質・香辛料・アルコール・カフェインなどは腸でガスを増やし、水分を引き込みやすく、腹痛・下痢・張りを誘発します。個人差が大きいため、食事日記で“あなたの引き金”を見つけることが有効です。

ホルモン・ライフイベント

月経周期、更年期、入学・就職・転居などの環境変化は、腸の動きや感じ方に影響し、症状を悪化させることがあります。

過敏性腸症候群の原因は
ストレス?

ストレスは症状を悪化させる重要な因子ですが、それだけが原因ではありません。
脳と消化管の機能的な関連を「脳腸相関」と呼びます。この概念で、過敏性腸症候群の病態をよく説明することができます。日常臨床では「心理社会的ストレスによって過敏性腸症候群(IBS)の消化器症状が発症もしくは増悪する」という現象をよくみます。
過敏性腸症候群の治療には、ストレスマネージメントも非常に重要な位置を占めます。


過敏性腸症候群になりやすい
性格

過敏性腸症候群(IBS)になりやすい人は、ストレスに敏感な傾向があると言われています。
とくに、「まじめで一生懸命に物事に取り組む人」「他人の評価を気にして落ち込みやすい人」「自己の感情を抑えがちな人」「完璧主義な人」などはストレスをため込みやすく、身体の変化に敏感で、症状を強く自覚しやすいとされています。
ただし性格=原因ではありません。性格はあくまでもリスク因子の一つにすぎず、環境調整やセルフケア、認知行動療法などで十分コントロール可能です。周囲の理解や働き方・学習環境の工夫も、再発予防に役立ちます。


過敏性腸症候群の症状

など

※血便や発熱・体重減少は過敏性腸症候群では生じないため、血便や発熱・体重減少が見られた場合には、他の病気が潜んでいる可能性があります。


過敏性腸症候群が
疑われるときの検査・診断

問診と診察で症状の型(下痢型・便秘型・混合型など)や経過、生活要因を確認し、血液検査・便検査(炎症マーカー、便潜血、腸内感染の有無 など)を行います。危険なサイン(発熱・体重減少・血便・貧血・40歳以降の新規発症・夜間の痛み等)がある場合や、他疾患の除外のために大腸カメラを行います。器質的な病気(炎症性腸疾患、腫瘍、憩室炎など)が否定できれば、IBSとして治療を進めます。
※過敏性腸症候群には、国際的診断基準もあります。

◆RomeⅣ基準における
IBSの診断基準◆

最近3か月の間に月に4日以上腹痛が繰り返し起こり、次の項目に2つ以上該当すること。

  1. 排便によって改善する
  2. 排便頻度の変化ではじまる
  3. 便形状(外観)の変化で始まる

6か月前から同様の症状があって、ここ3か月上記の条件にあてはまること。

当院は胃カメラ・大腸カメラ・腹部超音波検査に対応しています。
症状に応じて適切な検査を提案し、苦痛の少ない内視鏡検査を心がけています。


過敏性腸症候群の
治療(治し方)

過敏性腸症候群と診断されたら、薬物療法で症状を抑え、同時に生活習慣を改善し増悪に係わる因子を修正します。

生活習慣の改善

食事面では、低FODMAP食も有効です。過度の飲酒や香辛料の摂取もうまくコントロールすることも重要です。食物繊維と水分をしっかりとることも有効です。
生活面においては、不規則な生活、睡眠不足、軽い運動などを行い、ストレス対策を行っていきます。

薬物療法

治療は症状に合わせて段階的に行っていきます。
高分子重合体(ポリカルボフィルカルシウム)、消化管運動調整薬(トリメブチンマレイン酸塩、イトプリド塩酸塩)5-HT4受容体作動薬(モサプリドクエン酸塩水和物)、プロバイオテクス投与が第一選択となります。腹部症状を軽減するには、鎮痙剤を使用します。
下痢がある場合は止痢薬も有効で、便秘がある場合には緩下薬を使います。
効果の出方は、人によって異なるため、効果を確認しながら薬の量を調整していきます。
また、抗不安薬、抗うつ薬が有効なケースもあります。

心身医学的治療

上記治療で改善がなければ、認知行動療法や絶食療法・催眠療法などの心理療法が考慮されます。認知行動療法など専門的な治療が必要な場合には、連携する医療機関をご紹介させていただきます。

過敏性腸症候群に
ヨーグルトはいい?

ヨーグルトは合う人と合わない人がいます。一部の方では腸内環境の改善に役立ちますが、乳糖不耐症の体質だとガスや下痢が悪化します。試す場合は、無糖のプレーンヨーグルトを少量から2週間ほど続け、腹痛・張り・便通の変化を観察します。悪化する場合は中止し、食物繊維や発酵性食品の量も含めて個別に調整しましょう。


過敏性腸症候群を
放置するとどうなる?

過敏性腸症候群(IBS)は命に関わる病気に進行することは通常ありませんが、仕事・学業・外出の制限、欠席・遅刻、旅行や試験の不安など生活の質(QOL)を大きく下げます。
自己判断で下剤や整腸剤を乱用すると、かえって症状が不安定になることもあります。
また、血便・体重減少・発熱は過敏性腸症候群では見られない症状であり、これらの危険サインを伴う場合に「過敏性腸症候群だから」と放置すると、炎症性腸疾患や大腸がんなどの見逃しにつながるおそれがあります。症状が続く・悪化する際は早めにご相談ください。

なかみち内科・内視鏡クリニック