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胸がジリジリ焼ける(胸焼け)

胸焼けとは

胸焼けは、みぞおちから胸の中央にかけて「焼ける」「熱い」ように感じる症状で、多くは胃酸が食道へ逆流して起こります(胃食道逆流症:GERDの典型症状)。
脂っこい食事、就寝前の飲食、肥満、前かがみ姿勢、妊娠、ある種の薬(例:骨粗鬆症薬のビスホスホネート、抗凝固薬のプラザキサなど)で悪化しやすく、酸っぱい液が上がる「呑酸」を伴うこともあります。典型例では8週間の胃酸分泌抑制薬(PPI)内服で改善が期待できますが、つかえ感・体重減少・出血(黒色便)などの危険サインがある、長期に続く/薬で改善しない、飲み込みにくい等があれば、内視鏡で粘膜の炎症や狭窄、別疾患(好酸球性食道炎など)を確認します。
国内外のガイドラインでも、症状パターンに応じた段階的評価と治療が推奨されています。

胸焼けと胃もたれの違い

胸焼けは「胸の奥が焼ける・熱い」不快感で、食後や就寝時、前かがみで悪化しがちです。一方、胃もたれは「胃が重い・消化が遅い感じ」で上腹部の膨満感・早期満腹感を伴い、機能性ディスペプシア など胃の運動機能の不調が背景にあることも。両者は重なる場合もありますが、胸焼けは食道側(逆流)に由来することが多く、胃もたれは胃のはたらきの問題が中心です。判断がつきにくい・長引くときは自己判断で市販薬を使い続けず、内視鏡を含め適切に評価します。

胃もたれ


胸焼けの原因

逆流性食道炎(NERDを含む)

胃酸や消化液が食道に逆流し、胸焼けや呑酸の原因となります。内視鏡で炎症が見えない非びらん性逆流症(NERD)も多く、症状のみで診断することもあります。まずは生活指導(体重管理、就寝2–3時間前の絶食、ベッド頭側挙上)+PPI/P-CAB(ボノプラザン等)を試み、反応が乏しければpH-インピーダンス検査や内視鏡で再評価します。

逆流性食道炎

食道裂孔ヘルニア

横隔膜の裂孔が広がり胃の一部が胸腔側へ移動すると逆流が起こりやすくなります。体位や腹圧で悪化し、夜間症状や咳・声枯れを伴うこともあります。内視鏡や造影で形態評価し、薬物療法で不十分な難治例では外科治療が検討されます。

好酸球性食道炎(EoE)

食物抗原などを背景に食道壁へ好酸球が浸潤し、胸焼け・つかえ感・食物のつかえ(食道閉塞)をきたします。PPIが有効な例もありますが、確定には内視鏡生検が必要です。治療はPPI、食事療法(除去食)、局所ステロイドが軸となります。GERDと症状が似るため、内視鏡での鑑別が重要です。

機能性ディスペプシア(FD)

最適な酸抑制でも軽快せず、GERD・好酸球性食道炎(EoE)・主要な運動異常や器質的疾患が除外される場合の機能性疾患です。知覚過敏や中枢処理の関与が示唆され、過敏に対するアプローチ(心理社会的介入、神経調整薬など)を検討します。診断にはRome IV基準が用いられます。

機能性ディスペプシア(FD)

薬剤性食道炎

ビスホスホネート、テトラサイクリン系、カリウム製剤、NSAIDs などで食道粘膜障害が生じ、胸焼けや痛みの原因になることもあります。内服時の多めの水と就寝直前の服用回避、薬剤変更で改善することがあります。

胸焼けの原因はストレス?

ストレスは胃酸曝露そのものよりも「症状の感じ方(知覚過敏)」を強め、胸焼けの自覚症状を悪化させることが知られています。医学論文(疫学研究やメタ解析)でも、ストレス・不安・抑うつとGERD症状の関連が示され、ストレスが高い人は胸焼けを訴えやすい傾向があります。したがって「ストレスだけが原因」とは言えませんが、睡眠・運動・リラクゼーション等のストレス対策は再燃予防に有用です。症状が続くときは器質疾患の除外を優先しつつ、必要に応じ心理的アプローチも組み合わせます。


胸焼けの症状

  • 胸の奥がヒリヒリして熱い感じがする
  • みぞおちの辺りがジリジリ焼けるような感じがする
  • 酸っぱい液がのどまで上がる(呑酸)
  • 口が酸っぱい感じがする
  • のどの違和感
  • 前かがみ・重い物を持つと悪化する
  • 背中までしみる感じがする
  • 食後すぐ横になるとつらい
  • 夜中に目が覚める
  • 歯がしみる(酸蝕)・口が苦い・げっぷが増える
  • 声がかすれる
  • 咳が長引く(夜間に悪化)

など


胸焼けがあるときの検査・診断

典型的な胸焼け・呑酸のみで危険サインがない場合、まずは8週間のPPI内服を試します。改善しない、繰り返す、つかえ感・体重減少・貧血・出血などがある場合は、上部消化管内視鏡で食道炎・びらん・狭窄・バレット食道、好酸球性食道炎(EoE)の有無を確認し、生検を行うことがあります。PPIに反応が乏しい場合は、pH-インピーダンス検査や食道運動検査で逆流の客観評価を行い、治療方針を最適化します。
※胸焼けとは別に、便潜血・血便・体重減少など大腸のサインがあれば当院で大腸カメラもご相談ください。


胸焼けがあるときの
治療(治し方)

基本は生活習慣+薬物療法の組み合わせです。

  1. 体重管理(減量)
  2. 就寝2–3時間前の飲食を避ける
  3. ベッド頭側を15–25cmほど高くする
  4. 各自の“誘発食品”を日誌で見つけ控える
  5. 禁煙などが推奨されます。

薬物はPPI/P-CABが中心で、H2受容体拮抗薬や制酸薬を併用することもあります。夜間症状には就寝時の頭側挙上や左向きの体勢が有効です。
難治例ではpH-インピーダンス検査で表現型を確認し、食道裂孔ヘルニアが大きい場合は外科治療を検討することもまれですがあります。
好酸球性食道炎(EoE)が関与する症例では、PPIに加え局所ステロイドや除去食を選択します。症状が再燃しなければ、PPIは必要最小限に減量・中止も検討します。

胸焼けにヨーグルト効く?

「ヨーグルトで胸焼けが治る」という明確な医学的根拠は現時点で十分ではありません。発酵乳が合う方もいれば、脂肪分でかえって症状が悪化する方もいます。主要ガイドラインは、特定食品の「一律に制限する」よりも、各自で症状を誘発する食品を識別して調整すること、夜間は就寝前2–3時間の絶食や体重管理・頭側挙上など「再現性の高い介入」を優先する立場です。試す場合は低脂肪タイプを少量から、寝る直前は避けるのがおすすめです。改善しないときは他の治療選択肢を検討しましょう。

胸焼けに牛乳効く?

牛乳に含まれるたんぱく質や脂質が胃酸による刺激から胃を守るので、胃もたれの緩和が期待できますが、含まれる脂肪や量によっては胃酸分泌や逆流を促し、後で悪化することがあります。
ガイドラインで牛乳を治療として推奨する記載はなく、就寝前の摂取は避ける、必要なら少量・低脂肪で試すなど「個別対応」が現実的です。症状が続くときは自己判断での反復摂取に頼らず、生活指導と薬物療法の最適化、必要に応じた検査で原因を確認しましょう。

胸焼けが楽になる姿勢は?

夜間症状には「左向きで寝る(左側臥位)」と「ベッド頭側の挙上」が有効です。左側臥位は食道への酸曝露を減らすとの系統的レビューがあり、実臨床でも取り入れやすい工夫です。枕の重ね使いでは頭だけが曲がり逆効果なので、マットレス下に傾斜を作る・就寝時の上体挙上具を使うのがコツです。食後すぐ横にならない、夕食は就寝2–3時間前までに終える、前かがみ作業を避けることもあわせて行いましょう。

なかみち内科・内視鏡クリニック