- 逆流性食道炎とは
- 逆流性食道炎の原因
- 逆流しやすい体質は？
- 逆流性食道炎の症状
- 逆流性食道炎が疑われるときの検査・診断
- 逆流性食道炎の治療（治し方）
- 逆流性食道炎のやってはいけないことは？
- 受診の目安・当院でできること
逆流性食道炎とは
逆流性食道炎は、胃の中の酸や胃内容物が食道へ逆流し、食道粘膜が刺激・炎症を起こす病気です。典型的には「胸焼け」や「酸っぱい液が上がる感じ（呑酸）」がみられ、食後や横になったときに悪化しやすいのが特徴です。近年は食生活の変化や肥満、ストレス、在宅勤務での座位時間増加などを背景に、若い世代でも増えています。症状だけのタイプ（非びらん性の逆流性食道炎）も多く、放置するとQOL（睡眠・仕事効率・食事の楽しみ）が大きく損なわれます。治療は生活習慣の見直しと、胃酸を抑える内服が中心です。早めに対処することで、再発予防もしやすくなります。
逆流性食道炎の原因
食道と胃のつなぎ目には、下部食道括約筋という筋肉があります。この筋肉が食物の通過するとき以外は、胃の入り口を締めて胃の中の酸や胃内容物を逆流しないようにしています。
この筋肉が緩むと胃から食道への逆流がおこり、食道粘膜が刺激され炎症を起こすことが原因といわれています。ストレスや前かがみの体勢なども関与します。
そのほかには薬剤性（降圧剤で使用されるCa拮抗薬など）も原因の一つになっています。
逆流しやすい体質は？
「食道と胃の境目が緩みやすい」「腹圧がかかりやすい」体質・体型は逆流性食道炎を助長します。具体的には、肥満体型や妊娠、便秘・前屈み姿勢の多い生活、食道裂孔ヘルニアのある方などです。加えて、炭酸・脂質・甘味の多い食生活、夜遅い食事、ストレスで睡眠が浅い方は症状が出やすくなります。
一方、遺伝的素因の関与は限定的で、生活習慣を整えるだけでも改善する方が多いです。
「寝る向き」に気を付けることも大切で、「左側を下にして横向きに寝る」ことが、最も推奨されています。
逆流性食道炎の症状
- 口の中が酸っぱくなる
- 口の中が苦い感じがする
- のどが痛い、違和感がある
- 胸焼けがする
- 食後・横になると悪化する／夜間に目が覚める
- 胃部不快感・吐き気がある
- 胃酸が上がってくる感じがある
- 喉の枯れや咳が出る
- 不快な口臭を感じる
- げっぷがよく出る
- 胸痛（心臓由来の痛みと紛らわしい痛み）
など
逆流性食道炎が疑われるときの
検査・診断
まずは問診で生活・食事・服薬歴と症状パターンを整理し、必要に応じて胃カメラ（上部内視鏡）で食道炎の有無や程度、別疾患（潰瘍・食道がん・食道カンジダ・好酸球性食道炎・胃癌・胃潰瘍／十二指腸潰瘍など）の除外も行います。
内視鏡で異常が乏しい場合でも、症状が典型なら治療的診断を行います。再燃や難治例では、食道pH/インピーダンス検査で逆流の客観評価を行うこともあります。
「胸焼けが続く」「夜間に目が覚める」「嚥下障害・体重減少・貧血・黒色便」などは、早めの内視鏡が安全です。当院では、早期治療を行うためにも、胃カメラ検査はなるべく早く受けれるように対応しています。
逆流性食道炎の治療（治し方）
治療の基本は①生活習慣の改善と②胃酸分泌を抑える薬です。生活面では、就寝3時間以内の飲食を避ける・食べ過ぎない・脂っこい／甘い／刺激の強いものやアルコールを控える・減量・禁煙・きつい衣類を避ける・食後は前屈みを控える・枕やベッド頭側を少し高くする・左向きで寝る、といった工夫が有効です。薬物療法は、第一選択のPPIやP-CAB（ボノプラザン等）、軽症にはH2ブロッカー、頓用の制酸薬、必要に応じて粘膜保護薬・アルギン酸製剤や消化管運動改善薬を併用します。数週間で改善することが多いですが、再発しやすいため完治を焦らず再燃予防の生活・頓用薬の使い方も一緒に整えていきます。当院では症状タイプに合わせ、段階的に薬を“増やす/減らす”方針をとり、難治例は検査を追加して原因を見極めます。
逆流性食道炎に
大根おろしはいい？
「大根おろしで胃が楽になる」と感じる方はいますが、医学的に逆流性食道炎を治すエビデンスは確立していません。大根おろしは普段の食事として取り入れて問題ありませんが、酸逆流を抑える薬や生活改善の代わりにはなりません。むしろ脂っこい料理と一緒に“食べ過ぎる”と逆流を助長します。体質や同時に摂る食品で感じ方は変わるため、「食べて楽ならOK・悪化するなら控える」という実用的な基準で良いでしょう。症状が続く場合は自己判断で食養生に頼らず、医療機関で評価を受けてください。
逆流性食道炎にバナナはいい？
バナナは酸度が低めで胃にやさしいイメージがありますが、逆流性食道炎を治す食品ではありません。食物繊維やカリウムが多く便通・血圧にはプラスですが、人により発酵しやすさや満腹感で逆流が悪化することもあります。結論は「合う人には合う」です。
朝食の主食として少量をゆっくり噛んで食べ、就寝前や満腹時は避ける、といった工夫がポイントです。症状が出るなら無理に摂る必要はなく、まずは生活習慣と薬物療法を優先しましょう。
逆流性食道炎は
水を飲むと治る？
水を少量飲んで一時的に食道に付着した胃酸を洗い流すような一時的な対策としては効果ありますが、病気そのものを治す効果はありません。就寝前の多量の飲水はかえって逆流を助長することもあります。外出先で胸焼けが強いときの一時しのぎとしては構いませんが、繰り返す場合は適切な薬と生活改善が必要です。夜間症状には、枕やベッド頭側を少し高くしたり、左向きに寝る姿勢も役立ちます。
逆流性食道炎の
やってはいけないことは？
- 就寝前3時間以内の飲食、夜食・寝酒
- 満腹までの過食・早食い・がぶ飲み
- 食後すぐ横になる／前屈み作業を続ける
- きついベルト・腹圧が上がる服装
- アルコール・喫煙の継続
- 「効くかも食品」への過度な依存
（大根・バナナ・炭酸など） - 症状が続くのに市販薬だけで漫然と自己対処
- 体重増加を放置すること
対策として「左向きに寝る・枕/ベッド頭側を高くする」など姿勢の工夫が有効です。
受診の目安・当院でできること
次のような場合はご相談ください。
- 2週間以上続く胸焼け・呑酸
- 夜間に目覚める胸焼け
- 嚥下障害・体重減少・貧血・黒色便・吐血
- 市販薬で改善しない
- 再発を繰り返す
当院では、生活指導＋薬物療法の最適化、必要に応じた胃カメラ、難治例の精査まで対応します。患者さんの「つらい時間」を減らすことを最優先に、一緒に再発しにくい体調づくりを目指します。
