機能性ディスペプシア

胃や十二指腸の動き・はたらきの異常

胃が十分に広がらず、食べ物を溜めて消化する機能に障害が起こる、「胃適応性弛緩障害」が認められます。胃から十二指腸へ食物を送り出す能力の遅延や逆に亢進したりします。 そのために胃が十分に膨らまず、少量の食事で満腹になりやすいといった症状が出ます。

内臓知覚過敏

通常なら気にならない程度の胃のふくらみや酸の刺激を「痛い・苦しい」と強く感じてしまうことがあります。十二指腸に酸や脂肪が入ったときに嘔気や膨満感・不快感を強く感じることがあると言われています。

胃酸分泌の異常

胃酸は機能性ディスペプシア（FD）の症状の一部に関連していることがわかっています。胃酸に対する胃粘膜や十二指腸粘膜の知覚過敏が症状の原因といわれており、食後に十二指腸内は酸性になりやすく、それにより十二指腸運動の低下や胃知覚過敏を引き起こす可能性があります。

胃・十二指腸の微小な炎症

十二指腸粘膜内の好酸球や肥満細胞などの炎症性細胞浸潤が機能性ディスペプシア（FD）の症状と関連していると考えられています。

心身ストレス

心身ストレスは機能性ディスペプシア（FD）の発症や症状の増悪に関連する重要な因子の１つです。機能性ディスペシアにかかる人は、不安や抑うつなどの心理的ストレスが高頻度に認められます。そして、ストレスは腸管の運動異常や内臓知覚過敏を引き起こし、症状を悪化させる可能性があります。

生活環境やライフスタイル

運動・不眠・高脂肪・食生活の乱れなどのライフスタイルには、機能性ディスペプシア（FD）と大きくかかわります。
機能性ディスペシアにかかる人は、身体活動レベルが低いという報告もあり、夜間の覚醒や熟睡感が得られにくい睡眠障害があるともいわれています。
食事に関しては、高脂肪食によって吐き気・腹痛が出現しやすく、腹部膨満感や満腹感を感じやすくなります。

機能性ディスペプシアの
原因は自律神経？

自律神経とは関係すると考えられています。胃腸の動きは自律神経がコントロールしています。強いストレスや緊張、睡眠不足が続くと交感神経が優位となり、胃の血流や運動が落ちて「もたれ」「早く満腹」「ムカつき」を感じやすくなります。また不調への不安がさらに症状を増幅させる悪循環が起こることもあります。深呼吸・軽い運動・入浴・睡眠リズムの整えなどで自律神経が安定すると、薬だけに頼らない症状軽減が期待できます。症状が強い場合は薬物療法と合わせ、ストレスケアを並行するのが有効です。

機能性ディスペプシアで
背中の痛みある？

機能性ディスペプシア（FD）の主な症状は、心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状です。背部痛は典型的な症状ではありませんが、患者さんの中には消化管の機能異常や心理社会的因子が関与することで、間接的に背部痛を訴えるケースが稀にある可能性があります。
ただし、背部痛が持続する場合は胆のう・胆管、膵臓、心臓など別の病気の可能性も考慮し、精査が必要です。とくに「突然の強い背部痛」「発熱・黄疸・持続する吐き気」「体重減少」を伴う場合は早めの評価が必要です。機能性ディスペプシア（FD）と自己判断せず、気になる背部痛が続く場合はご相談ください。当院では必要に応じて血液検査・腹部超音波・上部消化管内視鏡などを組み合わせて評価します。

自己記入式質問票

ディスペプシア症状の種類や程度などを評価する質問票として、数種類の質問票があります。症状の頻度などを聞き取る項目から成り立っており、機能性ディスペプシアや逆流性食道炎の診断の助けになります。

胃カメラ（上部消化管内視鏡検査）

鑑別すべき疾患には、胃がんや食道がんなどの悪性疾患、胃潰瘍や逆流性食道炎などの炎症性疾患、これらが疑われるような場合に器質的疾患の除外にもすごく有用な検査です。

胃カメラ

機能性ディスペプシアに
ヨーグルトはいい？

ヨーグルト自体は胃粘膜を直接治す薬ではありませんが、腸内環境を整えることが間接的に役立つ場合があります。一方で、乳糖不耐症の方はヨーグルトでお腹が張る・気持ち悪いが出ることもあります。合うか合わないかは個人差があります。試される場合、プレーンや低脂肪を少量から、食後に摂取するようにしましょう。悪化する場合、無理に続けず、納豆・味噌など他の発酵食品や食物繊維で腸内環境を整える方法に切り替えましょう。

機能性ディスペプシアは
温めるといい？

お腹を温めると血流が良くなり、筋緊張がゆるんで「張り・重さ」が和らぐ方がいます。カイロや湯たんぽ、温めたタオルを衣服の上から当ててみてください。ただし、強い痛み・発熱・嘔吐など炎症の可能性がある時は温めで悪化することもあります。楽になる範囲で用い、症状が強い・長引く場合は受診を優先してください。温めはあくまで補助的対処で、根本治療ではありません。

機能性ディスペプシアに
良くない食べ物は？

症状を悪化させやすいのは、高脂肪食（揚げ物・こってりした食べ物・生クリームなどの乳製品）、大量の甘い物、強い香辛料、炭酸飲料、アルコール、早食い・ドカ食いです。コーヒー・濃いお茶・チョコレートは量と体質で差が出ます。食事は少量をゆっくり、よく噛んで。温かい和食中心の食事、脂身は控えめにしましょう。朝食を抜くと昼にドカ食いしてしまうといったような、食生活の悪化の流れになりやすいので、軽くでも朝食をとるのがおすすめです。

機能性ディスペプシアを
自力で治す方法はある？

生活調整で改善する方も比較的いらっしゃいます。以下のような生活習慣を心掛けるようにしましょう。

• 食べ方：少量頻回、就寝前は食べない、脂・炭酸・アルコールを控える
• リズム：毎日同じ時間に食事・就床起床、軽い運動（散歩・ストレッチ）
• ストレスケア：深呼吸・入浴・趣味時間・スクリーンタイムを減らす
• 禁煙

※ただし体重減少・貧血・黒色便・発熱・飲み込みにくさがあるときや、中高年の初発、自己対処で2週間以上改善しない場合は受診を検討ください。適切な検査と薬物療法と併用すると回復が早まります。